遺言書とは、あなた様のご意思によって、ご自身亡き後の財産や権利の在り方を決める法的な文書です。遺言書を正しい書き方で用意しておくことで遺産をめぐる争いを防ぐだけでなく、遺産承継の手続きがとても簡便になります。遺言書はご自分の財産の円滑な承継に欠かせない、とても大切な文書なのです。
遺言書を書くことによる効果、メリットを3つ、ご紹介します。
まず遺言書があれば、遺産をめぐる争いを防ぐことができます。
相続が発生すると、被相続人(亡くなった方)の財産は相続人が分けることになるわけですが、遺産を分ける方法は3通りあるといえます。
1.遺言書があれば、遺言書により
2.遺言書がなければ遺産分割協議により
3.遺産分割協議が整わなければ調停・審判
となります。
昨今の相続では、各相続人がそれぞれの権利をしっかりと主張します。
先日はこんなご相談がありました。
同居して世話をしてくれる長男に自宅を残したいけれど、次男というか、その嫁がしっかり者で長男と同じ権利を主張すると思うから気に入らないのっ(汗)
ご長男に確実にご自宅を残すため、その旨を遺言書に書くことをおすすめしました。
このような相続にまつわる揉め事を防ぐため、遺言書は大変有効です。
遺産の分け方には3通りあり、遺言書が無い場合相続人全員で遺産の分け方を話し合って決めることになりますとご説明しました。
この話合いを遺産分割協議と言うのですが、遺産分割協議にはお話合いがまとまらず揉め事になるのリスクの他に、次のようなリスクがあります。
近年は長寿化が進み、100歳以上の人口は8万人もあるそうです。
ということは相続が発生したとき、相続人の方もかなりの高齢である可能性が高くなります。
すると相続人の中には認知症を発症している方が含まれるケースも少なくはないでしょう。
相続人の中に認知症の方がいると、遺産分割協議はそのままでは進めることができず、遺産は凍結したままとなってしまいます。
まず認知症の方に代わって遺産分割協議を行う後見人を決める必要があり、ただでさえ煩雑な相続手続きがさらに複雑になります。
もし遺言書があれば遺産分割協議書が不要になりますから、ただちに名義変更の手続に入れます。
ところでかつて相続対策といえば主に相続税の対策のことでした。
なので、「うちは財産ないから関係ないわ」とおっしゃる方が今でも多いです。
しかし長寿社会となった今日、相続の対策として必要となるのは相続税対策の他認知症の対策です。
そしてこの認知症の対策は財産の過多にかかわらずどなた様にも必要な対策です。
遺言書は、最も基本的な認知症対策とも言えるでしょう。
遺言書があれば、前述のように遺産分割協議も必要なく、また認知症のような相続人の諸事情に影響されないため、名義変更などの手続きにすぐに入ることができます。
さらに遺言書を公正証書で作成した場合は、戸籍を集める手間も省くことができますので、手続きがさらに簡便に済みます。※
また遺言執行者を指定しておけば、全て遺言執行者が手続きをしますので相続人はほとんど何もしなくて済みます。
不動産を譲るのに、遺言書による相続で名義変更する場合は贈与税がかかりませんし、登録免許税も安く済みます。
お住まいの自宅を、いずれお子さん名義にしたいとお考えの方は多いと思います。今のうちに名義を変更しておきたいのですが・・とのご相談を時々いただきます。
生前に名義を変更するのは一般的には贈与になります。
不動産を贈与すると、まず贈与税がかかります。贈与税は数千万の物件ですと価額の3分の1位のイメージです。そして贈与を受ける側には不動産取得税がかかります。また登録免許税は固定資産税評価額の2%です。
一方相続で名義変更する場合は、贈与税、不動産取得税はかかりません。また登録免許税率も0.4%で贈与の場合の5分の1です。
相続税がありますが、相続税は贈与税より基礎控除額が大きいく、特例もあるので課税されるケースは限られます。
このようなわけで、今すぐに名義を変えたい、というのでなければ、自宅を子に相続させるという内容の遺言を書くのがおすすめです。
遺言による相続なら、税金も節約できて先々確実に子の名義にすることができます。
このようなわけで、今すぐに名義を変えたい、というのでなければ、自宅を子に相続させるという内容の遺言を書くのがおすすめです。
遺言による相続なら、税金も節約できて先々確実に子の名義にすることができます。
遺言書の、遺産相続の場面おける効果をご説明してきましたが、遺言書では、財産を渡す相手を決めることの他に、以下の事項を決めることができます。
・生命保険金の受取人を変更をすること
・祭祀承継者を指定すること
・認知をすること
公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人の関与のもと行う遺言です。
作成に際し、公証人が本人の意思と内容を確認し、また2名以上の証人が立会いますので、遺言の有効性に疑いをもたれる余地は概ね無いと言えます。
したがって確実な遺言書を遺したい、という方には公正証書遺言がおすすめです。
また公正証書であれば自分で書く必要がなく、外出が困難な場合はご自宅や施設に出張もしてもらえます。
ただし費用が財産の額により数万円から数十万かかります。
また準備に際し、証明書類を収集したり証人を手配したりと、手間も結構かかります。
それらの手間は、専門家にサポートを依頼することもできますが(当事務所でも勿論お受けしております)その分さらに費用はかかってしまいます(汗)。
こうしてみてきますと自筆証書遺言と公正証書遺言、それぞれ一長一短あります。
手軽さを優先するなら自筆証書遺言、確実性を優先するなら公正証書遺言でしょうか。ご事情に応じてご検討ください。
遺言は財産の円滑の承継のために大活躍するとても重要な文書です。
事情やお気持ちが変わったら、その都度変更することも可能ですから、是非今のお考えを遺言に残していただきたいと思います。
ちょっときになることなどありましたら、どうぞお気軽にお問合せください。
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