国際結婚などで海外にお住まいの日本人の方でも、日本の方式で遺言書を書くことができます(遺言の方式の準拠法に関する法律第2条)。
特に相続人に外国籍の方が含まれる場合は手続きが煩雑になりますので、遺言を作成しておくことが大切です。
財産が日本と海外にある場合は、
・日本にある財産については日本式で
・海外にある財産については現地の方式で
それぞれ遺言書を作成しておくことがおすすめです。
日本国籍の方の相続には日本の法律が適用されますし、海外にある財産についても日本式の遺言で定めておくこともできますが、個々の物権の手続には所在地の法律が適用されます(通則法13条)。
したがって手続きの都合上、現地の方式で遺言されておくのが望ましいのです。
日本式の遺言には、主なものに公正証書遺言と自筆証書遺言があります。
自筆証書遺言であれば手軽に作成できますが、以下のように検認の問題があります。
円滑な執行のためには、できるかぎり公正証書で作成するのがおすすめです。
自筆証書遺言の場合は、遺言の執行に先立ち家庭裁判所にて検認が必要となります。
検認は、遺言書の改ざんなどトラブルを防ぐための法定の手続です。
海外在住の方の場合は、日本における最後の住所地の家庭裁判所に申し立てをすることになりますが、そこで確実に管轄が認められるか否か、定かでありません。
また検認には、遺言者(亡くなった方)の出生から死亡までの記載のある戸籍一式の他、相続人全員の戸籍の添付が必要ですが、相続人が外国籍の方で戸籍にあたる書面がない場合は、宣誓供述書など、戸籍の代わりとなる書面の添付が必要となります。
自筆証書遺言を法務局に預ければ検認は不要ですが、法務局に預けるためには日本に住民登録があることが条件です。
また法務局に預けてある遺言書情報の発行を求める際は(つまり、遺言書を法務局から受け取る際は)、検認と同じく戸籍類の提出が必要となります。
自筆証書遺言の場合は上記のような手続き上の問題があります。
確実な遺言の執行には公正証書で遺言を作成しておくのがよいでしょう。
外国在住の方の公正証書遺言は、在外公館で作成します。
詳しくは最寄りの在外公館か、弊事務所までお問い合わせください。
海外で公正証書遺言を作成する場合は、日本の公証役場で公証人が作成する場合とは異なり、遺言書の内容はご自身で確認する必要があります。
在外公館に公正証書作成の予約をする際には、あらかじめ書き方・注意点などを調べて案文を用意しておくことが大切です。
こちらに遺言書の書き方の一例をご紹介いたします。
具体的な書き方、注意点は「遺言書の書き方」のページで詳しくご紹介しておりますので参考になさってください。
遺言書
遺言者 国際太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は、遺言者の有する次の財産を、遺言者の妹横浜一子(昭和20年3月3日生)に遺贈する。※1
(1)土地
所在 横浜市遺言書区文例通一丁目
地番 ○○番○○
地目 宅地
地積 200平方メートル
(2)建物
所在 横浜市遺言書区文例通一丁目○○番地○○
家屋番号 ○○番○○
種類 居宅
構造 木造合金メッキ鋼板ふき平屋建て
床面積 50平方メートル
2.遺言者は、遺言者の有する次の財産を、遺言者の妻国際花子(昭和25年1月2日生)、遺言者の長男国際一郎(昭和53年2月3日生)に各2分の1の割合で相続させる。※1
(1)預貯金
遺言銀行 横浜支店 普通預金12345
文例銀行 東京支店 普通預金23456
3.遺言者は、この遺言の執行者として次の者を指定する。※2
横浜市遺言書区書き方1-23
行政書士法人遺言書事務所
2024年9月23日
現住所
国際太郎 ※3
被相続人(お亡くなりになった方)が海外在住であっても、日本における財産は、日本の相続手続きによって継承されます。
被相続人(お亡くなりになった方)が海外在住であっても、上記のように遺言書を作成なさっていれば、遺言の内容に従って財産が相続されます。
遺言がない場合は下記のように相続人全員の話し合いで合意したうえで財産を分割します。
国内外に分かれる相続人が話し合いで合意にいたるのはとても大変です。
ぜひ遺言で円滑な相続に備えてください。
遺言書がない場合は、相続人全員が話し合いで(遺産分割協議)で財産を分割し相続することになります。
遺産分割協議は相続人全員で行うため、相続人の中に海外在住の方がいる場合は連絡をとり、必要な書類を日本と海外でやりとりする必要があります。
日本における相続手続きでは、遺産分割協議書に基づいて、金融機関での相続手続きや不動産の名義変更をします。
この遺産分割協議書には、相続人全員が署名をし、実印にて押印し、印鑑登録証明書を添付することで、金融機関や法務局は署名の真正の確認をします。
しかし印鑑登録及び印鑑登録証明書の発行は、一部の在外公館を除きほとんどの在外公館では取り扱いがありません。
そのため、日本国籍で海外在住の相続人の方は、印鑑証明書に代わる署名証明の取得が必要となります。
署名証明は、申請者の署名が領事の面前でなされたことを証明するものです。
署名証明の発給を受けるためには、
1.申請者が日本国籍を有していること
2.申請者本人が在外公館に出向いて申請すること
が必要です。
T国にお住まいのN様から、T国籍の配偶者の方に、日本にある全ての財産を遺す遺言書の作成をお手伝いしました。ありがたいメールをいただきましたので、ご紹介いたします。
「先生のお仕事は、“事が起きた時なるべく顧客に有利にように解決してあげる”というよりも”必ずだれにでも起きる事を想定して、残された者たちがトラブルにならないよう、煩雑な事務に困らないように事前に顧客を啓蒙する”とても有意義な仕事と思います。ですから何かの時に必要でしたら、私の事例を出してもらって結構です。先生のお役に立ちたいということもちろんでありますが、何より私どものような、海外に住んで周りに頼りになる専門家がいない、そんな老人達の助けになれば幸いという思いからです。私どもは素早く、やさしく対応していただける先生に出会えて幸せです。」
-自分で遺言書を書くのが少し不安な方へー
遺言書の書き方セミナーのご案内です。
講座でお伝えするポイントを参考に、ご自身で遺言書を正しく作成いただけます。書き上げた遺言書は自筆証書遺言としてそのまま保管することも、法務局に預けることもできます。また公正証書遺言の原稿としても活用できます。
遺言書の必要性についてまずご説明し、基本的な書き方、遺留分や遺言執行者などの注意点、応用編、遺贈寄付の仕方など様々なテーマをご説明します。自分1人で遺言書を書くのは少し不安・・・という方は是非ご参加ください。
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