遺言執行者とは遺言の内容を実行する担当者のことです。
せっかく遺言を作成しても、本当に実現できるのか気がかりですね。
そんなときは、信頼できる遺言執行者を指定しておくと安心で確実です。
こちらのページでは遺言執行者の役割と、特に指定した方がよい場合についてご説明しております。
遺言執行者とは遺言の内容を実現することを職務として指定された者のことをいいます。
遺言の効力が発生するのは遺言者がお亡くなりになった後ですから、遺言者は自ら遺言をありすることができません。
そのため遺言を確実に実現するには、遺言者の代わりに手続きをする人が必要です。
この遺言者の代理人が遺言執行者なのです。
遺言に基づく相続財産の分配は、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が単独で手続きができるため、円滑・確実になります。
反対に遺言執行者が指定されていないと、遺産を受け取るために、遺産をうけとらない相続人も含めた全ての相続人の実印も必要となる場合があり、円滑な遺産の継承ができない場合があります。
迅速・円滑に遺言が執行されるためには、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。
遺言書
遺言者 相続太郎は次の通り遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者が有する全ての財産を、遺言者の妻 相続花子
(生年月日) に相続させる。
第2条 遺言者はこの遺言書の遺言執行者として、次の者を指定する。
住 所 横浜市文例区相続通り1-2
氏 名 遺言書 太郎
職 業 行政書士
生年月日 1980年1月1日
遺言執行者が指定されていない遺言の場合は、相続発生後に選任することもできます。
関係者が家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てをすることで、弁護士等の専門家が遺言執行者に選任されます。
また遺言で遺言執行者に指定された者が、家庭裁判所に辞任を申立てすることもできます。
遺言執行者の役割は、遺言の内容を誠実に実行することです。
そのために遺言執行者には以下の手続を行う権限が与えられております。
相続させる財産にご自宅など不動産が含まれる場合は、登記名義を相続人の名義に変更する手続きをします。
不動産と同様、預貯金など金融資産を、相続させる相手の名義に変更します。
解約して複数の相続人に相続させる内容の遺言の場合は、預金を解約をし、遺言の内容通りに相続人に分配します。
遺言者の生前の支払いの清算などに対応する「清算型の遺言書」の遺言執行者は、遺言者の遺産から支払いを行います。
特に借入などはなくても、最後の入院費用など死亡後に発生する支払いは諸々あることが多いです。
それらの清算に遺言執行者が対応することも可能なのです。
ただ事業者を遺言執行者を指定する場合には、清算事務には対応していない場合も多いので、事前に確認する必要があります。
清算型の遺言書のついては「遺言書の書き方&文例集」で文例をご紹介しております。
上記の手続を実行するため、遺言執行者は次のような業務を行います。
・相続人調査(戸籍謄本・除籍謄本・住民票・住民票除票等の請求取得)
・相続関係図の作成
・相続人への通知、連絡、報告
・相続財産調査(固定資産評価証明・残高証明等の請求取得)
・財産目録の作成
次のような場合は特に、遺言執行者を指定しておかないと名義変更が困難になりかねませんのでご注意ください。
相続人の中に、遺産を受け取る人と受け取らない人がいる場合は、遺言執行者を指定しておくのがおすすめです。
金融機関によっては預貯金の解約の際に、相続人全員の署名と実印での押印を求められることがあります。
つまり遺産を受け取らない相続人の関与が必要となる場合があるのです。
遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者の実印のみで手続きが可能です。
相続人の関与なく手続きをおこなうためには、遺言執行者を指定しておくことが大切です。
遺言で、相続人以外の者に財産を遺すことを遺贈といいます。
不動産の遺贈の場合は、遺言執行者が指定されていないと名義変更の手続に相続人の署名が必要となります。
つまり遺言執行者が指定されていないと、相続人の関与なく名義変更することができません。
相続人の関与なく名義変更するためには遺言執行者が欠かせません。
受遺者当人を遺言執行者とすることもできますが、相続人との対応や専門的な知識が求められる場合もあるため、第三者である専門家を指定した方が安心です。
相続人が全くいないお一人様の場合、遺言書がないとご遺産は国庫に帰属することになりますので、是非遺言書をご用意いただきたいと思います。
遠縁の方や、支援している団体などに財産をのこす遺贈の内容になると思いますが、上述の通り、遺贈の場合は専門家を遺言執行者に指定することをおすすめいたします。
財産を相続させる相手がご高齢の場合は、単独での手続きは困難でしょう。
遺言執行者を指定しておけば全て手続きしますので、ご高齢の相続人でも安心です。
相続人間で、受け取る遺産の多い少ないなどで不満が生じる可能性があるケースでは、単独で手続きができる遺言執行者を指定しておいた方が財産を円滑に継承できます。
遺言執行者がいれば、相続人同志が関わらなくて済むので、揉め事を未然に防ぐことができます。
相続人の中に外国在住の方がいる場合も遺言執行者は必須といえます。
遺産の名義変更手続きには相続人の印鑑証明書が必要ですが、外国在住の方の場合は印鑑証明書がとれない場合があります。
代わりの書類を入手することはできますが、大変な手間がかかります。
(なお、日本在住の方であれば、外国籍でも印鑑登録はできます。)
遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が単独で手続きができますので、円滑な手続きのためには必ず遺言執行者をご指定ください。
なお、相続人の中に外国籍の方がいる場合は、遺言の方式にも注意が必要です。
円滑な遺言の執行のためには相続時に戸籍収集が必要となる自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作成されることをおすすめいたします。
遺言執行者には、相続人の1人など遺言者の関係者を指定することも可能ですが、確実な遺言執行のためには専門家を遺言執行者に指定しておくのがおすすめです。
専門家を遺言執行者に指定すると以下のようなメリットがあります。
金融機関によっては、遺言執行者が指定されていても、その遺言執行者が相続人の1人である場合は、預貯金の解約のために、相続人全員の署名と実印での押印を求められることがあります。
解約後に遺言の内容に不満をもつ相続人からクレームが入らないようにするためと思われます。
専門家が遺言執行者に指定されていれば、遺言執行者の実印のみで手続きが可能です。
相続人の関与なく手続きをおこなうためには、専門家を遺言執行者を指定しておくのが安心で確実です。
遺言執行は煩雑な事務です。
相続人の1人を遺言執行者に指定すると、1人にだけ負担がかかりますから、他の相続人との関係で不公平感が生じる可能性があります。
専門家を遺言執行者に指定すれば、特定の相続人に負担がかかることがないため、そのことで相続人間に不満が生じることがありません。
遺言執行は煩雑な事務です。
戸籍や印鑑証明書を取得し、依頼書や申請書など沢山の書類に目を通し記入する必要があります。
複数の金融機関に預金がある場合は一か所ずつ別々に手続しなくてはなりませんので、慣れていないと時間がかかります。
また遺産を受け取らない、あるいは受け取る遺産が少ない相続人にも報告の義務がありますのでお身内の場合は大変なストレスになる可能性もあります。
専門家を遺言執行者に指定すれば時間も大幅に短縮でき、円滑な手続きが可能となります。
専門家を遺言執行者に指定すると報酬が発生します。
報酬の額は事業者によりさまざまですので、各事業者のホームページなどでご確認ください。
一般的に、金融機関の遺言執行の報酬は士業者よりも大変に高額です。
参考までに、M信託銀行と弊事務所の遺言執行報酬を記載します。
(令和6年現在の報酬) | M信託銀行 | グレイスサポート |
---|---|---|
基本手数料 | 330,000 | 121,000 |
最低報酬額 | 1,100,000 | 385,000 |
財産比例報酬 | ~1.870% | ~1.1% |
遺言執行者を専門家に指定すると上述のようなメリットがありますが、一方で報酬が発生するのがデメリットといえるでしょう。
メリットとデメリットをご考慮のうえ、遺言執行者をご指定ください。
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