遺留分は、一定の相続人のために、相続に際し法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことです(民法1042条)。
遺言書では、遺言者(遺言書を書く人)は、任意に相続分(財産の分け方)を指定することができます(相続分の指定 民法902条)。
しかし遺留分を上回る相続分が指定されている場合は、遺留分権利者(遺留分を持つ相続人)は、財産を多く相続したものに対し、遺留分相当額の支払いを請求することができるのです(遺留分侵害額請求権 民法1046条)。
そのため遺留分を侵害する内容の遺言書はトラブルのもとになりかねません。
遺言書を用意される際は、遺留分にご配慮ください。
もっとも遺留分侵害額請求権は権利ですので、行使するかしないかは、遺留分権利者の判断によります。
遺留分侵害額請求権の行使期間は1年間です。
遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは時効により消滅します。
相続開始の時から10年経過したときも同様です。
遺留分を正しく理解いただくため、前提として法定相続人と法定相続分についてまずご説明します。
相続人は法律で以下のように順番が決められておりますのでご確認ください。
-法定相続人-
常 に:配偶者
第1位:子
第2位:親
第3位:兄弟姉妹
被相続人が法律婚なさっている方であれば、配偶者は必ず相続人になります。
さらに被相続人に、お子さんとご両親とご兄弟がいらした場合、子→親→兄弟姉妹の順番で相続人になります。
子、 親、兄弟が、同時に相続人になることはないのです。
相続発生時に遺言書がない場合、相続財産は相続人全員が共有している状態となります。
この場面において、各相続人の間で財産が公平に承継されるように法律で一定の分割割合が定められており、これを法定相続分といいます。
わかりやすく言うと、被相続人(財産を遺す人)がお亡くなりになった時に遺言がのこされていなかった場合の分割割合の目安です。
それぞれの相続人の法定相続分は次の通りです。
-法定相続分-
配偶者+子 : 配偶者1/2 子1/2
配偶者+親 : 配偶者2/3 親1/3
配偶者+兄弟姉妹 : 配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
※同列順位の相続人が複数いる場合はさらに等分します。 例えば子が2人いる場合、子1人当たりの相続分は 1/2÷2=1/4 となります。
もっとも実際の相続の場面では、法定相続分通りに遺産分割されるわけではありません。
相続人全員の合意により、任意に分割することができます(遺産分割協議)。
遺産分割協議が整わないと、調停・審判により遺産が分けられることになります。
遺留分の有無は、相続人により異なります。
相続人のうち、遺留分があるのは、配偶者・子・親 、つまり兄弟姉妹以外の相続人です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合は、2段階で考えます。
まず全体としての割合が決まっております(総体的遺留分)。次に法定相続分を掛け、相続人毎の割合を計算します(個別的遺留分)。
同順位の相続人が複数いる場合はそこから按分し、一人一人の割合を計算します
総体的遺留分の割合は、相続人が親など直系尊属のみの場合は3分の1で、それ以外の場合は2分の1となります。
直系尊属のみの場合 3分の1
それ以外の場合 2分の1
-相続人- -遺留分-
配偶者のみ 1/2
子のみ 1/2
親のみ 1/3
配偶者と子 1/4 1/4
配偶者と親 1/3 1/6
法定相続分と遺留分についてまとめると、以下の表のようになります。
例:推定相続人が配偶者と子ども2人の場合
配偶者の遺留分:4分の1
第1子の遺留分:8分の1
第2子の遺留分:8分の1
例:推定相続人が配偶者と両親の場合
配偶者の遺留分:3分の1
父親の遺留分 :12分の1
母親の遺留分 :12分の1
代襲相続とは、相続人になるはずの人が先に亡くなるなどした場合、その相続人になるはずだった人の子が代わって相続人となることをいいます。代襲相続人とは、代襲相続をした人のことです。
遺留分権利者が相続開始前に先に亡くなっている場合には、代襲相続人に遺留分がみとめられます。
代襲相続人の遺留分は、先に亡くなった遺留分権利者(被代襲相続人)が持っていた遺留分と同じですのでご注意ください。
例:推定相続人が配偶者、第1子、第2子の子(孫)2人の場合
各自の遺留分は次のようになります。
配偶者 :4分の1
第1子 :8分の1
第2子の第1子:16分の1
第2子の第2子:16分の1
兄弟姉妹に遺留分はありません。したがって兄弟姉妹が相続人になる場合は、遺言により全ての財産を任意に渡すことが可能です。
”ご存命の” 家族・親族を全て選択してください。
入力がうまくいかない場合は、上記内容をご確認のうえ、メールにてご連絡ください。
「遺留分の算定の基礎となる財産の額」=
「相続時における被相続人の財産の額」
+「相続人に対する生前贈与の額」※10年以内
+「第三者に対する生前贈与の額」※原則1年以内
-「被相続人の債務の額」
「遺留分侵害額」=
「遺留分の算定の基礎となる財産の額」
×「総体的遺留分率」×「法定相続分率」
-「遺留分権利者の特別受益の額」※期間の制限なし
-「遺留分権利者が相続によって得る財産の額」
+「遺留分権利者が相続によって負担する債務の額」
次の設例で具体的に解説します。
遺言者 :甲
遺産 :総額1億円
受遺者 :丙(相続人でない第三者)
相続人 :乙(子)のみ
遺言内容:甲は、丙に、全ての財産を遺贈する
生前贈与:乙に対し、5年前に1,000万円、11年前に1,000万円を贈与
「遺留分の算定の基礎となる財産の額」
1億+1,000万(5年前の贈与)=1億1,000万
「遺留分侵害額」
1億1,000万(遺留分算定の基礎となる財産の額)
×1/2(乙の遺留分率)×1(乙の相続分率)
ー2,000万(乙への生前贈与の総額)
ー0(乙が相続によって得る財産の額)
+0(乙が相続によって負担する債務の額)
=3,500万
乙は丙に対して、3,500万円を遺留分侵害額請求できます。
生命保険は受取人固有の財産とされるため、原則として遺留分に含まれません。
遺留分を侵害されたら遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
遺留分侵害額請求はあくまで権利ですので、必ず請求しなければならないものでは勿論なく、請求する、しないは、遺留分権利者がご事情を考慮し判断することになります。
「遺留分侵害額請求」を行うと、侵害された遺留分の相当額がお金で支払われることになります。※
内容証明信書などで侵害者に通知をし、侵害額の支払いを求めます。
遺留分侵害額の請求は、上述のように請求の基礎となる財産や、不動産の価格の根拠などをめぐってトラブルになりがちです。
請求を検討される場合は、弁護士さんに対策を相談なさることをおすすめします。
※法改正により、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に代わり、侵害額を相当の金銭で清算することになりました。
遺留分侵害額請求はいつまでもできるわけではありません。
以下の期間が経過すると請求できなくなります。
● 知った時から1年
遺留分権利者が、
・被相続人が亡くなって相続が開始したこと
・遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと
の両方を知ってから1年が経過すると遺留分侵害額請求権は時効により消滅します。
この時効がスタートするのは、これらを知った時点からです。
そのため、被相続人が亡くなってから5年後にこれらの事実を知ったのであれば、そこから1年間は遺留分侵害額請求をすることが可能です。
● 相続開始から10年
被相続人が亡くなったことや、遺留分侵害の事実を知らないままであったとしても、相続開始から10年が経過すると、遺留分侵害額請求をすることはできなくなります。
遺留分権利者が、死亡の事実や遺贈の事実を知らないまま時間が過ぎた場合でも、10年以上もしてから遺留分侵害額請求がされてしまうと、請求される側の経済的な安定性が損なわれるからです。
遺留分請求の対象となるのは、遺言による相続に限りません。次の場合も遺留分請求の対象となります。
遺贈も遺言で財産を譲る行為です。相続人以外の者に、遺言で財産を譲る場合を遺贈といいます。
遺贈も遺留分請求の対象となります。
死因贈与は贈与契約の一種です。死亡を原因として贈与することを死因贈与といいます。
遺言が遺言者による一方的な行為であるのに対し、贈与の場合は契約であり、贈る人ともらう人双方の合意が必要なところが遺言との大きな違いになります。
この死因贈与も遺留分請求の対象となります。
生前贈与は、生前に行う贈与契約です。
相続人に対し相続開始前10年以内に行われた生前贈与は遺留分請求の対象となります。
遺留分を有する相続人は,相続の開始前(被相続人の生存中)に,家庭裁判所の許可を得て,あらかじめ遺留分を放棄することができます。
被相続人の生存中に,被相続人の住所地の家庭裁判所に申立てをします。申立書に被相続人の財産を相続する意思がない旨、財産の目録を記載し、審判を得ることで放棄できます。
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