遺言書にはいろいろ種類がありますが、まずは一般に活用されている公正証書遺言と自筆証書遺言についてご説明します。
特徴 | 長所 | 短所 | |
---|---|---|---|
公正証書 | 公証人(裁判官OB等)が遺言者の意向を確認し作成 | 形式不備がない 改ざん紛失の心配がない 手書き不要 出張可 | 手間と費用がかかる 証人2名必要 |
自筆証書 | 自筆で本文の全文日付氏名を書き押印 財産目録はPC,コピー可 | 遺言者が一人で作成可 費用がかからない | 形式不備・紛失などトラブルが起きやすい 検認必要 |
自筆証書 (法務局保管) | 自筆で本文の全文,日付氏名を書き押印 財産目録はPC,コピー可 | 遺言者が一人で作成可 改ざん紛失の心配がない 係官が形式確認 検認不要 | 申請の手間がかかる 遺言者本人が法務局に行く必要あり |
☆ 公証人が遺言者の意思を聴き取りし作成する遺言書です。
☆ 公証人は前職が判事や検事だった公務員で、公正証書は公文書となります。
☆ そのため確実性が高く、紛失や改ざんの心配もありません。
☆ 一方作成は打ち合わせを重ねて慎重に行うため、1か月程度は要します
☆ 証人が2名必要です。
☆ 公正証書遺言は費用が公証人手数料の他、事務所に支援を依頼する場合はその費用も含め数万から十数万かかります。
☆ 確実な遺言書を作成したい方
☆ 自分で文字を書くことが困難な方
☆ サポートを受けながら遺言書を作成したい方
☆ 認知症の傾向がある方
☆ 争族の心配がある方
☆ 文字通り自筆で作成する遺書言です。
☆ ボールペンなど消せない筆記具で財産目録を除く全文を自身の手で書く必要があります。
☆ いつでも手軽に作成でき、費用もかからないのが良いところです。
☆ ただしその反面、様式不備で無効になったり、紛失、改ざんの心配があります。
☆ 家庭裁判所における検認手続きが必要となります。
☆ 2020年に自筆証書遺言の保管制度が開始しました。この制度を利用すれば紛失・改ざんの心配もなく、また検認は不要となりますが、交付請求が必要です。
☆ 費用をかけずに遺言書を作成したい方
☆ とりあえず遺言書を作成しておきたい方
☆ 争族の心配がない方
☆ 不自由なく文字が書ける方
☆ 先々遺言書の内容の変更が予想される方
*事前準備
公正証書遺言を作成するときは、最寄りの公証役場に電話かメールなどで、まず相談の予約をします。
予約日に公証役場に行き、公証人と面談します。公証人に意向を伝え、相談しながら遺言書に書く内容を決めていきます。公正証書遺言は公証人が文章を書きます。専門的なことは教えてもらえますので、全く知らなくても大丈夫です。もし自筆証書遺言の下書きなどがあれば持参しましょう。内容を踏まえて公正証書の体裁に整えてもらえます。
必要な証明書類(印鑑証明書、戸籍や固定資産評価証明など)の指示がありますので取得をします。
*作成日当日
作成日には実印と公証人手数料をご用意ください。公証人手数料はこちらをご参照ください。概ね数万から10数万の費用感です。
また作成日には証人2人の立ち合いが必要となります。家族や遺産を受け取る予定の人は証人にはなれませんのでご注意ください。手配が難しい場合は、公証人にご相談ください。士業事務所でもお引き受けしております。
作成日当日は、公証人が用意した原本を読み上げ、遺言者と証人が署名捺印をして終了です。所要時間は30分程度です。
作成した原本は公証役場で保管され、遺言者は謄本を持ち帰ります。謄本は何冊でも用意してもらえます(その分の費用は多少かかります)。ご家族などにも手渡しておきたい場合は、あらかじめ必要な冊数をお伝えください。
作成に要する期間はひと月から数か月程度です。余裕をもってご準備ください。
もし、度々公証役場に足を運ぶことが難しい、敷居が高くて気後れする、気楽に相談したい、などの場合は士業事務所の公正証書作成サポートをご利用になると便利です。
遺言書の種類は実は他にもありますので、参考までにご紹介いたします。
まず遺言の種類は大別して普通方式の遺言と特別方式の遺言に分けられます。
特別方式の遺言として次の4種類あります。
特別な状況下に配慮し要件が緩和されたもので、あまり使われることはない遺言です。
1. 死亡危急時遺言
2. 船舶遭難時遺言
3. 伝染病隔離時遺言
4. 在船時遺言
コロナの影響を受けておりますが近年はクルーズ旅行を楽しむシニアの方も多くいらっしゃいますので在船者の遺言について少しご紹介します。
在船者の遺言は、地上と長い間隔離された状況での遺言なので、いくらか簡易な方法で作成することが可能となっているのがポイントです。
自筆で遺言を書くことは船上でももちろん可能なのですが、自分の手で文字が書けないと自筆証書遺言は書けません。
そこで船上では特別に、船長または事務員が1人それから証人2人以上の立会があれば自筆でなくても遺言が作成できるのです。
地上にいる時は、公証人に頼まなければ自筆以外の遺言は作成できないところ船上という特別な環境が考慮されたわけなのです。
これが在船者の遺言についての決まりです。
(民法978条)
2021.8.06『終活30秒講座』vol.68より
感染者数をチェックするのが日課となってしまったこの頃ですが (^^;
97,700人は何の人数だと思われますか?
答えは昨年1年間の公正証書遺言の作成件数です。
ちなみに一昨年は113,137件でした。
それまで年々増加傾向だったのが昨年久々に減少に転じましたが理由は法務局における自筆証書遺言の預かり制度が始まった関係ではないかと思います。
自筆証書遺言も法務局に預けることで手軽さはそのままで、未発見等の心配もなく大変おすすめです。
しかし証明力の高さでは公正証書遺言がやはり最強です。
ですので何かご事情のある方や、きちんとしておきたい方には公正証書遺言がおすすめです。
例えば
✓離婚歴がある
✓再婚している
✓子どもがいない
✓障がいのある子どもがいる
✓疎遠だったり不仲な家族がいる
このような方は公正証書遺言をご検討ください。
遺言は財産の円滑の承継のために大活躍するとても重要な文書です。
事情やお気持ちが変わったら、その都度変更することも可能ですから、上記の文例などを参考に是非今のお考えを遺言に残していただきたいと思います。
またグレイスサポートでは、定期的に遺言書セミナーも開催しております。無料のオンラインセミナーとなっておりますのでご興味のある方はお気軽にご参加ください。
遺言書の書き方に特化したセミナーです。
講座でお伝えするポイントを参考に、遺言書を正しくカンタンに作成いただけます。書き上げた遺言書は自筆証書遺言としてそのまま法務局に預けることもできますし、公正証書遺言の原稿としても活用できます。
遺言書の必要性についてまずご説明し、基本的な書き方、遺留分や遺言執行者などの注意点、応用編、遺贈寄付の仕方など様々なテーマをご説明します。
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