相続が発生すると、ご遺産は遺産分割協議により分けることになりますが、遺産分割協議に際し、相続人のご事情により手続きが困難となる場合があります。

こちらのページでは相続人の中に認知症の方がいる場合についてご説明しております。

相続人の中に認知症の方がいる場合



相続人に認知症の方がいる場合、認知症の方は単独では遺産分割協議ができません。遺産分割協議は法律行為だからです。ご本人に代わって遺産分割協議を行う法定後見人の選任を家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。


法定後見人は家庭裁判所が選任します。候補者を出すことはできますが、弁護士などの専門家が選ばれることが多く、当然報酬も発生し、額も裁判所が決定します。

選任された法定後見人は認知症の本人に代わり遺産分割協議を行います。

法定後見人は本人の財産を守るのが仕事であるため、遺産分割協議においても本人の法定相続分は確保することになります。

また法定後見は遺産分割協議が成立しても終了しません。

ご本人が回復するか、亡くなるまで続きます。その間報酬も、もちろん発生します。 

 

成年後見制度とは

 成年後見制度についてご説明します。

法定後見は成年後見制度の種類一つです。

成年後見制度には法定後見の他に任意後見という制度がありますが、上述のように既に認知症を発症している方の場合は法定後見を検討します。

法定後見制度は「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれ、判断能力の程度に応じて利用できます。

任意後見では後見人は自分で選ぶのに対し、法定後見における後見人、保佐人、補助人は家庭裁判所が選ぶのが大きな特徴です。

後見人、保佐人、補助人は本人の利益を考えながら代理で契約したり、不利益な契約は取り消ししたりすることで本人を保護支援します。

法定後見制度を利用するには本人や親族から家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
申し立てから審理、審判を経て、法定後見が開始するまで3~4か月ほどかかります。

法定後見の概況



法定後見利用のきっかけは、下図のようになっております。

法定後見のきっかけ

2020年最高裁判所資料より

上記の通り、成年後見の申し立て動機の1位は「預貯金の管理・解約」です。

銀行に行って、認知症気味の親の預金を代理で解約や引き出しをしようとした際に、「成年後見人をつけください」と銀行から言われて、成年後見を考えられる方が多いようです。相続がきっかけになるケースは第5位となっております。


また法定後見では、一定以上の財産がある場合、親族は後見人になれない可能性が高く、つまり家族以外の他人が入ってきてその他人の成年後見人が本人の財産を管理します。

法定後見人 割合

2020年最高裁判所資料より

上記の通り、8割近くが親族以外でそのほとんどは弁護士、司法書士などの専門家です。

後見人の使命は本人の財産を守ることです。そのため本人の財産を減らす行為は許されず、
極端な例では孫にお小遣いを渡すこともままならなくなります。


そしてこれら職業後見人選任された場合、報酬が発生します。

基本報酬は管理する財産の額により、以下の通りです。

1000万円以下・・・・・・・月2万円
1000万円~5000万円以下・・月3~4万円
5000万円以上・・・・・・・月5~6万円


また不動産を売って施設に入る手続きなど特別な行為をした場合は、売却価格の数%が付加報酬として支払われれることになります。

そしてこの法定後見は一度開始すると本人が亡くなるまでやめることはできません

まとめ

遺言書をご用意ください

 

相続人に認知症の方がいる場合、認知症の方は単独では遺産分割協議ができません。家庭裁判所により選任された成年後見人が、認知症のご本人に代わり遺産分割協議を行います。

法定後見は遺産分割協議が成立しても終了しません。ご本人が回復するか、亡くなるまで続きます。その間報酬の支払いも続きます。

 

このような事態を防ぐためには、遺言書をご用意ください。遺言書があれば、遺産分割協議書が不要となるので、そのために法定後見人をつける必要はなくなります。

 

かつて相続対策といえば主に相続税の対策のことでした。

なので、「うちは財産ないから関係ないわ」とおっしゃる方が今でも多いです。

しかし長寿社会となった今日、相続の対策として必要となるのは相続税の対策の他認知症の対策です。

そしてこの認知症の対策は財産の過多にかかわらずどなた様にも必要な対策なのです。


相続人になる方に、認知症の方がいらっしゃる場合は遺言書の作成を是非ご検討ください。

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代表の松下です。
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遺言書がない場合、相続手続きは相続人のお話合いから始めることになり、長く煩雑な道のりとなりがちです。

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