遺言書は、財産を相続させる相手を予め決めておく文書です。
例えばこのように書きます。
遺言書
遺言者横浜太郎は、遺言者が有する全ての財産を、遺言者の妻横浜花子(生年月日)に相続させる。
令和6年6月7日
横浜太郎 ㊞
しかしもし、上記の横浜花子さんが横浜太郎さんよりも先に亡くなってしまったらどうなるのでしょう。
受遺者が遺言者より先に亡くなると、せっかく書いた遺言は意味をもたなくなります。
このような場合は改めて、他の相続人などを受遺者とする遺言を書くことになると思われます。
しかしそれは二度手間ですし、もしかしたらその時は遺言者の横浜太郎さんの年齢がさらに進んでいて、遺言書を書く充分な能力がなくなっているかもしれません。
そこで、受遺者が先に亡くなってしまう場合に備えて、遺言には予備の受遺者を指定する条項を入れておくことができます。
この予備の受遺者を指定する一文が入った遺言を予備的遺言といいます。
予備的遺言:
受遺者が先に亡くなってしまう場合に備えて、予備の受遺者を指定する条項を入れた遺言のこと
予備的遺言の一例をご紹介すると次のようになります。
第2条が予備的遺言にあたる条項になります。
遺言書
遺言者横浜太郎は次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、遺言者の妻横浜花子(生年月日)に相続させる。
第2条
遺言者は、上記横浜花子が遺言者の死亡以前に亡くなった場合は、第1条で上記横浜花子に相続させるとした財産を、遺言者の長男横浜一郎(生年月日)に相続させる。
令和6年6月7日
横浜市中区海岸通り4-23
横浜太郎 ㊞
予備的遺言で決めておくことができる受遺者に特に範囲はありません。
そもそも遺言で財産を渡すことができる相手は相続人に限りません。
遺言で相続人以外の人に財産をのことすことも可能です。
したがって、財産を相続人である子にのこしたいが、もし子が先になくなってしまった場合は孫に相続させるというのはもちろん、いとこなど相続人以外の親類や、あるいは出身校や公益団体などの法人に遺贈するということも可能です。
遺言書
遺言者横浜太郎は次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、遺言者の長男横浜一郎(生年月日)に相続させる。
第2条
遺言者は、上記横浜一郎が遺言者の死亡以前に亡くなった場合は、第1条で上記横浜一郎に相続させるとした財産を、遺言者の孫横浜花子(生年月日)に相続させる。
令和6年6月7日
横浜市中区海岸通り4-23
横浜太郎 ㊞
遺言書
遺言者横浜太郎は次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、遺言者の長男横浜一郎(生年月日)に相続させる。
第2条
遺言者は、上記横浜一郎が遺言者の死亡以前に亡くなった場合は、第1条で上記横浜一郎に相続させるとした財産を、遺言者の出身大学である花田大学に遺贈する。
令和6年6月7日
横浜市中区海岸通り4-23
横浜太郎 ㊞
遺言では、遺言を実行する執行者をあらかじめ指定しておくことができます。
予備的遺言は遺言者が、ご自分の財産を、特定の相手に確実に渡すことを願って念入りに作成した遺言といえますから、より確実性をあげるために、遺言執行者も指定しておくのがおすすめといえます。
遺言執行者を指定しておけば、全ての手続は遺言執行者が行います。
そのため受遺者がご高齢だったり、また未成年であるなどの事情があっても支障なく遺言が実行されます。
遺言執行者に特別な資格はいりませんが、財産を扱う重大な任務ですから信頼できる専門家を指定しておくのが安心でしょう。
以下の文例の第3条が、遺言執行者を指定する条項になります。
遺言書
遺言者横浜太郎は次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、遺言者の長男横浜一郎(生年月日)に相続させる。
第2条
遺言者は、上記横浜一郎が遺言者の死亡以前に亡くなった場合は、第1条で上記横浜一郎に相続させるとした財産を、遺言者の孫横浜花子(生年月日)に相続させる。
第3条
遺言者は、この遺言の執行者に次の者を指定する。
横浜市中区海岸通り4-23
行政書士法人横浜事務所
令和6年6月7日
横浜市中区海岸通り4-23
横浜太郎 ㊞
遺言は財産の円滑の承継のために大活躍するとても重要な文書です。
事情やお気持ちが変わったら、その都度変更することも可能ですから、上記の文例などを参考に是非今のお考えを遺言に残していただきたいと思います。
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