危急時の遺言

緊急の状況における遺言書作成法についてお伝えします。自宅や病院でいつでも作成できて、しかも手書きをしなくても済む特別な方法です。

公正証書を手配する猶予のないときでも、この方法なら作成できるかもしれません。参考にしていただけましたら幸いです。

手書きが不要な自筆証書遺言

危急時の遺言とは

 

危急時の遺言は、自宅や病院でいつでも作成できて、しかも手書きをしなくてもよい遺言です。

一般的に使われる遺言の一つである自筆証書遺言は、どこでもすぐに作成できます。

しかし手書きをしなくてはならないのが、ご高齢やご病気の方には難しい場合があります。


一方で公正証書遺言は公証人が作成しますから、自分で文章を考えなくてよく、また手書きもする必要もありません。

しかし公証人の出張手配には大概ひと月以上かかりますので、緊急の状況ですと間に合わないということもあると思います。

今回お伝えする危急時の遺言は、このような緊急の場面に役立つ遺言になります。

 

危急時の遺言の特徴

 

危急時の遺言は次のような特徴(メリット)があります。

- 危急時遺言の特徴(メリット) -

● 遺言者が手書きしなくてよい

● 遺言者の署名押印は不要

● 証人3名の立ち合いがあれば作成できる

 

以下に具体的にご説明します。

危急時遺言の文例と作成法

遺言書 証明書類

証人のうち1人が、遺言者の言葉に従って遺言書を起案作成します。パソコン書きでも大丈夫です。

他の2人の証人と共に署名押印して遺言書は完成となります。

 


一例をご紹介します。

危急時遺言の文例

遺 言 書

 

 遺言者横浜太郎(生年月日、住所)は、病気療養中のところ重篤な状態に陥り死亡の危急に迫ったので、令和6年3月4日正午、遺言者自宅において、後記証人3人立会のうえ、証人鎌倉花子に対し次のとおり遺言の趣旨を口授した。

 

 

 1.遺言者は、遺言者の有する全ての財産を遺言者の妻 横浜花子(昭和20年3月3日生)に相続させる。

 

 2.遺言者は、この遺言の執行者として次の者を指定する。

   神奈川県鎌倉市文例通り1丁目23番地

   行政書士 鎌倉花子 (生年月日)

 

証人鎌倉花子は、遺言者の遺言の趣旨を筆記し、これを遺言者および他の証人に読み聞かせたところ、各証人はその筆記の正確なことを承認して、それぞれ署名、押印した。

 

令和6年3月4日

 

神奈川県鎌倉市文例通り1丁目23番地
証人 鎌倉花子 


神奈川県横浜市中区区海岸通り5丁目24番地
証人 東京一郎 


神奈川県横浜市中区区海岸通り6丁目24番地
証人 川崎次郎 

 

上記証人は運転免許証の提示により人違いでないことを証明させた。 

    

危急時遺言の注意点

 

最後にこの危急時遺言を作成する際の注意点をお伝えします。


この危急時の遺言は、緊急な状況であることに鑑み、遺言の要件が緩和されている特別な遺言になります。

そのため作成後20日以内に家庭裁判所で確認の手続を経る必要があります。

確認の際は遺言書の他、医師の診断書、遺言者の戸籍、証人の身分証の提出が必要となります。

念のため管轄の家庭裁判所にご確認の上ご用意ください。

そして相続発生後は通常の自筆証書遺言と同様、家庭裁判所で検認を経る必要があります。

検認についてはこちらで詳しくご説明しております。

つまり合計2回、家庭裁判所での手続が必要となります。



また危急時遺言は作成から6か月経過すると失効してしまいます。

したがって危急時遺言を作成した後体調が回復された場合は、改めて公正証書で遺言を作成されることをおすすめいたします。

 

- 危急時遺言の注意点 -

● 作成後20日以内に家庭裁判所で確認の手続が必要

● 相続発生後は通常の自筆証書遺言と同様、家庭裁判所で検認を経る必要がある

● 作成から6か月で効力を失う

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