秘密証書遺言は、公正証書遺言と自筆証書遺言のちょうど中間のような遺言書です。
あまり知られていないのですが、パソコン書きができるなどメリットも大きいです。
書き方と作成法についてご紹介します。
遺言書では公正証書遺言と自筆証書遺言が一般的ですが、そのちょうど中間のような遺言に
秘密証書遺言というのがあります。
あまり知られていないのですが、メリットも大きい遺言です。
一般に活用されている公正証書遺言、自筆証書遺言との違いと特徴についてご説明します。
| 特徴 | 長所 | 短所 |
---|---|---|---|
公正証書 | 公証人(裁判官OB等)が遺言者の意向を確認し作成 | 形式不備がない 改ざん紛失の心配がない 手書き不要 出張可 | 手間と費用がかかる 証人2名必要 |
自筆証書 | 遺言者が自筆で本文の全文日付氏名を書き押印 財産目録はPC,コピー可 | 遺言者が一人で作成可 費用がかからない | 形式不備・紛失などトラブルが起きやすい 検認必要 |
秘密証書 | 遺言者が作成済封印した遺言書を公証人が認証 | 本文全文,財産目録ともPC可 公証人が認証 改ざんの心配がない | 紛失の可能性あり 検認必要 証人2名必要 |
秘密証書遺言の特徴およびそのメリットは次のとおりです。
● パソコンで書ける
● 中身を秘密にできる
● 公証人が認証する
● 証人が2名必要
自筆証書遺言は、自分で作成する遺言で、また本文全文を自分自身で手書きをする必要があります。
(財産目録など本文以外はパソコン書きできます。不動産登記情報などのコピーの添付も可です)
分量が多いと手書きするのは思いのほか大変です。
また消せないペンで書く必要がありますので、間違えた場合は決められた方式に従って訂正しないと、有効な訂正となりません。
自筆証書遺言は、この点も注意が必要な遺言です。
一方で公正証書遺言は、公証人が作成しますので、自分で書く必要はありません。
この点は気軽ですが、公正証書を作成するには手間も費用もかかります。
秘密証書遺言は、この中間の特徴をもつ遺言です。
自分で作成する遺言ですが、手書きする必要はなく、パソコンで書いても有効です。
専門家などに頼んでパソコンで書いてもらうこともできます。
公正証書遺言は、公証人が作成しますので、遺言の中身は当然公証人に知られてしまいます。
また作成時に証人2名が立ち会うことが法律で決められておりますので、証人にも中身が知られてしまいます。
そのため中身を誰にも知られたくないというときは、公正証書はふさわしくありません。
秘密証書遺言は、自分1人でも作成できますので、遺言の中身を誰にも知られずにすみます。
自筆証書遺言では、遺言者が作成した事実を明確に証明する方法がありません。
そのため相続となった際に、遺言の内容を快く思わない者により、遺言者が作成したものではないと主張されてしまう可能性があります。
しかし秘密証書遺言は、遺言者が封緘した遺言を公証役場に持っていき、公証人が遺言者が作成した遺言であることを封筒に記します。
このことにより、間違いなく遺言者本人が作成したものであることを明らかにできます。
このように秘密証書遺言は公証人が関わる遺言ですが、公証人手数料は認証の報酬のみなで公正証書遺言より安価なのもメリットです。
秘密証書遺言は、公証人による認証の際に、証人2名も立ち合い封筒に署名をします。
秘密証書遺言はこの一連の手続を経ることより、公正諸書遺言と同様、遺言者本人が作成した遺言であることが明確にされる遺言といえます。
なお証人には、遺言者の配偶者・子などの家族、近い親族、受遺者等の関係者はなることができませんのでご注意ください。
証人に心当たりがない場合は、公証役場に相談すれば手配してもらえます。
秘密証書遺言の作成手順は次のとおりです。
1.遺言書を書き、署名押印する
▼
2.封筒に入れ、遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封印をする
▼
3.公証役場に遺言書を入れた封筒を持っていく
▼
4.公証人および証人2名の前で、住所氏名と自分が書いた遺言書である旨を申し述べる
▼
5.公証人が封紙上に、日付と遺言者の申述を記載し、遺言者および証人2名とともに署名押印をし完成
秘密証書遺言には以下のようなデメリットもあります。
● 無効になる可能性がある
● 失くしたり隠されたりする可能性がある
● 家庭裁判所の検認が必要
順番にご説明します。
秘密証書遺言は自筆証書遺言と同じく自分で作成する遺言ですが、遺言は書くべきことが法律で決められております。
そのため書き方、内容によっては無効になってしまう可能性があります。
正しい書き方をきちんと調べたうえで作成するようにしましょう。
下記のリンクから遺言書の書き方をご紹介しておりますので参考になさってください。
ご不安な場合は、専門家に相談なさることをおすすめいたします。
公正証書遺言は原本は公証役場で保管されます。
自筆証書遺言でも法務局に預けることが可能です。
しかし秘密証書遺言は自分で保管しますので管理が問題です。
しまい込んで紛失してしまうかもしれません。
また遺言の存在を快く思わない人が隠したり処分してしまう可能性もあります。
秘密証書遺言は自筆証書遺言と同じく、そのままでは名義変更などに対応できません。
相続が発生したら(遺言者が亡くなったら)遺言書をまず家庭裁判所に提出し、検認を受けてから、銀行の窓口や法務局に提示して預金の解約や土地建物の名義変更などをすることになります。
検認には遺言書の他、戸籍類を添付する必要がありますので、準備にも手間がかかります。
検認の流れは以下の通りです。
秘密証書遺言の特徴、メリット、デメリット、お分かりいただけましたでしょうか。
自筆証書遺言も公正証書遺言も一長一短だな・・・という方は、今回ご紹介した秘密証書遺言をご検討なさってみてください。
秘密証書遺言はご自分で書く遺言書ですから、遺言書の正しい書き方をまず知る必要があります。
遺言書の書き方と一例をこちらにご紹介します。
遺言書
遺言者 書き方太郎は、次の通り遺言する。
1.遺言者は遺言者の有する次の財産を遺言者の妻書き方花子(昭和20年3月3日生)に相続させる。 ※1
(不動産の表示)
(1)土地
所在 横浜市遺言書区文例通一丁目
地番 ○○番○○
地目 宅地
地積 200平方メートル
(2)建物
所在 横浜市遺言書区文例通一丁目○○番地○○
家屋番号 ○○番○○
種類 居宅
構造 木造合金メッキ鋼板ふき平屋建て
床面積 50平方メートル
2.遺言者は、遺言者の有する次の財産を、遺言者の長男書き方一郎(昭和50年1月2日生)、遺言者の次男書き方次郎(昭和53年2月3日生)に各2分の1の割合で相続させる。
(1)預貯金
遺言銀行 要件支店 普通預金12345
文例銀行 要件支店 普通預金23456
3.遺言者は、この遺言の執行者として次の者を指定する。
横浜市遺言書区書き方1-23
行政書士法人遺言書事務所
令和6年6月23日 ※2
横浜市遺言書区文例通一丁目○番地○
書き方太郎 印 ※3
有効な遺言書のポイントは次の3点です。
1. 誰に何を相続させるか明確に書く
2. 書いた年月日を正確に書く
3. 署名と押印をする
この3つを必ず記載します。
もし欠けると無効になってしましまう可能性がありますのでご注意ください。
遺言書の書き方は、こちらのぺージでさらに詳しく解説しておりますので参考になさってください。
遺言は財産の円滑の承継のために大活躍するとても重要な文書です。
事情やお気持ちが変わったら、その都度変更することも可能ですから、上記の文例などを参考に是非今のお考えを遺言に残していただきたいと思います。
自筆証書遺言でもお一人で作成するには不安がある方はどうぞお気軽にご相談ください。また定期的に遺言書の書き方セミナーも開催しておりますのでご活用ください。
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講座でお伝えするポイントを参考に、遺言書を正しくカンタンに作成いただけます。書き上げた遺言書は自筆証書遺言としてそのまま法務局に預けることもできますし、公正証書遺言の原稿としても活用できます。
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